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センター長のささやき 第7話
第7話 災害関連ニュースとメモの続きです
3月いっぱい待機してください
1月24日
・午前中、福井市の息子の家のテレビで偶然、第212回衆議院予算委員会国会中継に見入る。能登地区選出の近藤和也衆議員が能登半島地震の「被災者の方に思いを寄せていただきたい」と岸田首相に対策を求めた。切々と訴ったえる質問態度に共感を強くした。が、対する岸田首相の答弁にやや及び腰の印象あり、失望を覚えた。(秋の衆議院解散選挙では、再選を目指す自民党議員が選挙カーに乗り、たすき掛けで声をからして訴えていたが、案の定、落選の憂き目をみた。地元民の支持を得られなかったのである。一方、近藤議員は作業服姿で地道に地元を訪問していた)
「午後4時40分過ぎに穴水病院院長から電話あり、能登4病院での通常診療の早期見込みもつかず、4病院と話をしましたが、3月一杯、福井で待機して下さい。その間に宿舎も修理して住めるようにしておきます」とのこと(結局宿舎には住めず、仮設住宅に後日入居した)。
政府の対応は迅速だった? 地方行政機関の対応は?
1月30日
・岸田首相は30日の衆院本会議で施政方針演説を行った、能登半島地震復旧・復興支援本部を新設すると表明した(一カ月も過ぎて遅すぎる!)。京都大防災研究所はM7.3 相当の2つの地震が震源地の近くでわずか13秒差で発生した可能性があると解析、1回の地震と比べ、地震のエネルギーは約2倍に増大した。最初の揺れ(南西方向に延びる断層、これで半島沿岸部の隆起生じた)が収まる前に2回目の地震(北東方向に走る断層、これで津波が発生)が起こり、1分程度の激しい揺れとなって甚大な被害につながったと思われる。2回連動した地震の4分前にM5.5 の地震が発生した。複数の断層帯が連動した可能性が高いとのこと。
2月1日
・県は3日から生活再建を後押しするため災害ボランティアを珠洲市と能登町に派遣すると報告した(遅すぎる!)。 日本環境感染学会の災害時感染対策検討委員会副委員長の櫻井医師は1月に2度災害時感染制御支援チーム(DICT)として門前町に訪れたが、避難所が劣悪だという言い方よりも、運用の方法あるいは準備態勢が問題と指摘した。普段体育館として使っているけどここは避難所になるという認識が大切とのこと。
2月5日
・AM11時38分、M3.9、かほく市震度2、志賀町、中能登町、羽咋市、津幡町、氷見市、高岡市震度1。仮設住宅建設地がかぎられているので、輪島市では津波60cm予想地区に、70cmブロックでかさ上げして建設している。4000棟以上の希望あり。東日本大震災などでは震災3日目から仮設住居建設が始まったので、能登の場合は遅れている。国道県道は93区間、62区間がそれぞれまだ通行止め状態。北陸地方整備局では北陸地区での大規模災害時の道路啓開計画は立案されていなかった。こんなに早くこのような大規模災害が起きるとは想定していなかった。半島地区での災害の場合、 道路が使用できない場合どうするかも考えられていなかった。
政府地震調査委員会の全国地震予測地図2020年版20)から、石川県は地震リスクは少ないと宣伝して企業を誘致していた。実は、石川県は1997年度から地震被害の見直しをしていなかった。2007年の能登半島地震災害の対応はうまくいって、家屋の倒壊がほとんどなかったので能登半島の家屋は地震に強いと思い込んだと県が総括した。が、2020年12月ごろから群発地震が活発化、2022年県防災会議21)で地震災害の見直しが必要と意見が出た。見直しするつもりが、間に合わなかった。知事は国に対して早く見直しをと要望していたが、国は、近畿地区の調査を優先して、北陸地区は未着であった。国頼みではなく、自治体独自に対応を急ぐべきとの意見あり。
*2025年5月7日、石川県が地震被害想定を27年ぶりに見直しました22)。石川県に被害をもたらすであろう9本の活断層が地震で動き、県内自治体の被害が最大限になる想定をしました。なお、石川県西方沖の海域活断層は含まれません。震度7の地震発生で死者が2200人以上、4万6947棟が全壊・全焼、5万5339棟が半壊すると予測しました。災害関連死は384人~768人です。ただし家屋の耐震化を進めれば84%被害が軽減するとも予想しています。
医療者の支援とボランティア活動
2月7日、
・本日のm3.Com編集長記事23)、日本医師会長の松本氏が記者会見でJMATの最終目標は被災地の地域医療を取り戻すことであり、それにむけて息の長い支援が必要と全国の医師らに協力を求めた。2月6日時点のJMATは累計38チームに達し、避難所や診療所の診療再開をサポートしている。
2月18日
・能登島で中高生がボランティアとして被災家屋の片付け作業に従事した。能登町での医療支援を日本赤十字社が能登町でほとんどの医療機関の機能が回復したとして本日で終了と報告。輪島市の動物病院が再開院した。被災者とともに体調を崩したペットが受診。能登半島地震で、災害ボランティアの在り方が問われている。発災1か月を過ぎても、災害ボランティアセンターを通じて活動している人は2月16日時点で延べ2739人、阪神・淡路大震災では発生1か月で延べ62万人だった。神戸国際支援機構のメンバーは石川県珠洲市に連絡を取り、医師や看護師とともに避難所を訪問した。が、そこには医師はおらず、活動をことわられたという。市に問い合わせると、現場に任せているのでと言われた。「能登ではDMATなど公的に認められた団体でなければ活動しにくい。プロとアマを区別してしまう空気がつくられてしまったと嘆く」。一方、食料や宿泊場所を自ら確保し、得意分野で支援する「専門ボランティア」は114団体が現地入り、国などと連携する「全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)」がコーディネーター役だが、神戸国際支援機構など所属していない団体は活動してもカウントされない。東日本大震災では発生50日で約23万人、およそ1年で約102万人のボランティアが支援した。
3度目の穴水病院
2月21日
・午前8時45分高岡出発、9時に能越道の高岡北インターに到着、10時に七尾市着。のと里山海道徳田大津インターチェンジを過ぎて能越道越の原インターチェンジに向かう。途中、大小の道路損壊が47か所、特に、山側の反対車線側の崩落が目立つ。運転しつつ修復工事の困難さに暗然とする。40km―70kmで走行。1月5日は4時間半、1月22日は4時間、今回も4時間かかった。11時、越の原インターチェンジを抜ける。降りると少し渋滞する。宿舎に寄ると前回と全く同じ外観で修理無し。内部も同じ!。内部の花の鉢を外に出す。断水で水もないが、まだ、花は活きていた。11時20分穴水病院着。管理課と外来に持参のチョコをあげる。院内は断水状態続いている。内科外来で薬処方してもらう。院長が来られて処方箋90日分出してもらう。院長の弁「1月1日当直していたのですぐ対応できた。金沢から若い医師もすぐに駆けつけてくれたので、助かりました。今は、もうDMATいないがこれまでの震災時よりも長くいてくれた。今はJMATがいます。看護師さんの中で家がつぶれ家族が金沢に避難してしまっており、やめる人が出ている。事情が分かるので引き留めることもできない。仮設住宅を早くたててほしいと願っている。仮設住宅は隣の(介護老人保健施設)「あゆみの里」の敷地にも建設予定です。病院の5階の病室を改修して病院関係者の仮住まいを作る予定。病棟も数を減らして、看護師不足に対応する予定。これは、能登北部の他の病院も考えている。どれだけ、町に住民が残るかも考えなければならない。医科大からの非常勤もまだ待ってもらっている」とのこと。私は4月1日から勤務してもらえると思っているとのこと。外来看護師は、私に、「新しいアパートなどを用意してもらえば」とささやく。外来受付の人が、昨日来られた患者さんから、私が外来に出ているかと聞かれたとのこと。その人の名前を見せてくれる。近くに住まいしている人ならば今診てもいいですと伝えたが、その患者さんの避難場所がわからないという。12時近くになり外来1階の奥で昼ご飯の炊き出しを始めている。近くの、タンポポ薬局に行くと、私の顔をみるや、「先生、帰ってきてくれましたか!」と第一声、「今は、咳を訴える患者さんが非常に増えていて、メプチン吸入剤の処方が非常に多いです。吸入指導はしていますが、(メプチン吸入剤は必要か)どうですかね?」と。私は「咳にメプチン吸入を勧めていないし、喘息の人でもメプチン単独使用は勧めていない。埃交じりの冷気を吸うことによる物理的刺激で出る咳ではないか、のどを乾燥させないことが大事ですがーーーー」と答えた。
地震調査研究の結果を待っていたのが地震対策見直しの遅れになった?
午前11時42分、 M3.4.震度3珠洲市。穴水にいたが気づかず。能登半島地震を引き起こしたとみられる海域の活断層の存在が知られていたにもかかわらず、政府の地震調査研究推進本部の「長期評価」が間に合わなかったことを受け、19日、すべての評価が終わるのを待たず、日本海側にある海域活断層の位置や規模を迅速に公表する方針を地震調査研究推進本部が決めた。これまで、「30年以内に何%」という将来の発性確立の予測がまとまるまで、長期評価の結果を公表してこなかった。
災害で家が全壊して建て替えるに必要な費用は、約3000万円が目安。しかし、公費で賄えるのは約400万円、保険などの自助努力が必要。輪島市では20日、約3千戸で水道が復旧し、市内約3割の水道が飲み水に使えるようになった。警察庁長官は金沢市の県警察学校を訪問し、訓示した、警察学校は被災地をパトロールする14府県警の特別自動車警ら部隊約160人、車両約30台の活動拠点。富山県のけが人47人、全壊166戸、半壊510戸、一部損壊も併せて計1万1483戸の被害。文化財被害は61か所、災害廃棄物は4万4千トン(2月14日時点)。
本日の北陸中日新聞記事に、「国道249号線復旧見通せず」の記事あり、土砂崩れや路面の亀裂などの被害231か所、能越道で178か所、2007年の能登半島地震で復旧した11か所は能登大橋(穴水町)近くの土砂崩れ箇所を除き被害はなかつた。2007年の地震では能越道全線は1か月程度で仮復旧したが、今回は、土砂崩落個所が3倍もあり、壊滅的な被害であるので、復旧時期は見通せない。また、国民の税金をどれだけ使用するかも検討課題であるとした。奥能登、5高校の受験出願者はのきなみ減少した。
被災地病院の苦悩
また、北陸中日新聞別面では公立穴水総合病院院長と副院長のインタビューで、スタッフも被災者で地震直後は医師がトイレ掃除をしたと。一時は約800人もの避難者が病院に集まった。地震直後の4日間の睡眠時間は計2時間ほどであった。看護師が確保できないため入院患者は30-40人に抑えている。生活再建ができなければさらなる離職者が増える(現時点で、78人の看護師のうち3人が退職し、8人に退職意思がある)。今回の地震を契機に、これまで踏み出せなかった能登地方の病院再編を考え、役割分担によって各総合病院の負担を軽くすべきだと副院長が話した。ただし、高齢者の多い地元の人の生活文化も尊重しなければならない、医療の効率化のみを追求するのも難しいとも話した。
2月28日
・市立輪島病院で2024年度の計画のため、看護師アンケートを2月に行ったところ、26人がすでに離職を決め、2人が離職の意向を示した。28人は20-30代であった。14日時点で珠洲病院では125人いた看護師のうち、すでに2人が退職、18人が退職意向を示した。同日時点で穴水病院では78人のうち3人が退職、8人が退職意向。宇出津病院では80人中4人が退職届を出した。自宅が被害を受け、住めなくなっていて、こどもの進学や配偶者の仕事の関係で他の地域に移らざるを得ないケースや、被害に小さい地域で落ち着いて子育てをしたいとの意向を持つ人が多いという。
石川県は49億5300万円を医療機関や社会福祉施設の復旧に充てると2024年予算に計上した。奥能登公立4病院機能強化検討会(仮称)の設置に200万円を盛り込んだ。PM4時過ぎ、工藤先生から状況確認の電話あり、特に、変わりませんとご返事した。秋篠宮妃殿下が能登大震災を憂えて「私はどんな手助けをしたら良いでしょう」と毎日のように問われて、工藤先生は閉口していますとのこと。「黙って、今は見守るしかないねと御返事」しているとのこと。途中で、太田健先生が電話口に出られる。「どうですか?心配しています」とのこと。
*太田健先生とは私がデンバーのコロラド大CVPラボの留学中、同じデンバーのナショナルジューイッシュ病院に留学しておられ、日本に帰ってからも、長年懇意にしていただいている関係である。
2月29日
・穴水病院から患者さんの問い合わせありと電話「いつ来てくれますか?」。まだ、病院は下水管の修理ができていないので、断水状態という。
参考資料
20.地震本部 地震調査研究推進部 全国地震予測地図2020年版 jishin.go.jp/evaluation/seimic_hazard_map/shm_report/shm_report2020/ 2024年4月26日 アクセス
21.山田健吾 県地震被害想定見直し向け 対策部会が初会合 2022年9月7日 朝日新聞 asahi.com/articles/ASQ966W7GQ95PISC00C.html 2024年4月26日アクセス
22. MRO 石川県が地震被害想定を27年ぶりに見直し「死者2200人以上」「金沢市で震度7」 2025年5月7日https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mro/1895954?display=1 2025年5月8日アクセス
23.橋本桂子.能登地震から5週間、DMATからJMATへの引継ぎなど新たな課題も
松本日医会長「被災地の地域医療を取り戻すことが最終目標」2024年㋁7日配信. M3.comニュース m3.com /news/iryoishin/1191899 2024年㋁9日アクセス
第8話 いよいよ診療再開準備です に続く