本文
風邪の話をしましょう
風邪の話をしましょう(2話完結)
第1話
風邪とは何でしょうか?
古代中国では、吹く風が邪気を運んで身体の中に引き込むと風邪になると信じられていました。ですから「風邪をひく」といいますね。風邪とは感冒と言ったり、普通感冒とも言ったり、別名があります。が、医学用語として風邪症候群といいます。症候群とは、いろいろな原因で同じような症状や検査結果がでるのを示します。つまり、約90%は病原性ウイルス(ライノウイルスやコロナウイルス、パラインフルエンザウイルスです。コロナウイルスは新型コロナウイルスとは異なります)が原因です。これまで、風邪のウイルスは約200種類もあるといわれています。ライノウイルスが原因の風邪がもつとも多く約50%程度です、コロナウイルスは10~15%程度です。共通する症状は鼻水・鼻づまり、のどの痛み、発熱、頭痛、咳、痰などです。通常は1週間程度で治りますし、発熱しても3日間程度です。
気を付けなければならのは、冬に流行するインフルエンザウイルス感染です。典型的な症状は急激な高熱がでて、食欲低下や関節痛などの全身症状がでます。が。一部に、風邪の症状程度に軽い人もいます。また、昨今、流行しています新型コロナウイルス感染症も風邪症状程度の軽い症状しか出ない人もいます。ですから、風邪と思っても、症状の変化を観察する必要があります。インフルエンザウイルス感染と新型コロナウイルス感染は不幸にして死亡することもありますね。風邪症候群とは異なり重症化する感染症と考えてください
もっとも、肺気腫(COPDといいます)や喘息の方が風邪を引きますと、前者は炎症が長引き、肺炎に進行する場合があります。後者では、喘息発作を誘発します。糖尿病や免疫抑制剤で加療中のリウマチなどの膠原病や抗がん剤治療中の方、心臓病の方も免疫機能が低下していますので、風邪が長引き病原性細菌感染も加わり肺炎を併発することもありますので要注意です。
風邪の原因は?
夏の風邪と冬の風邪が知られています。夏の風邪は高温多湿に強いエンテロウイルスやアデノウイルスが原因として多く、どちらかというと発熱とのどの痛みに加えて腹痛や下痢などの消化器症状が出やすいです。一方、冬風邪は乾燥と低温に強いライノウイルスやコロナウイルス、パラインフルエンザウイルスなどが原因で鼻水、咳、のどの痛みなどの症状がよく出ます。
もっとも、梅雨時や秋口の気温や湿度の急激な変化時にも風邪症候群の方は多いですので、風邪は1年中誰かがり患しています。
第2話
風邪の診断方法は?
どんな症状かをよく尋ねます。また、身近な方や職場で同様症状がある人の有無も確認します。次いで、胸部の聴診をして肺炎を疑う異常肺音を聴取しないことを確認します。必要ならば胸部エックス線写真も撮影します。血液検査で軽度の白血球増加や炎症反応物質のCRP値の軽度増加を確認します。白血球の著しい増加やCRPの高値を認めれば、風邪ではなく気管支炎、気管支肺炎、肺炎に進んでしまっていると考えます。
風邪の治療法は?
風邪症状とは鼻水・鼻づまり、のどの痛み、発熱、頭痛、咳、痰などですので、それぞれ、解熱鎮痛薬、抗ヒスタミン薬などの鼻症状改善剤、鎮咳剤(メジコン、リン酸コデイン、フスコデなど)などで対応します。通常は1週間程度で治りますし、発熱しても3日間程度ですとお話しました。が、扁桃腺の腫れや高熱、膿性の痰などがあれば病原性細菌による炎症(副鼻腔炎、扁桃腺炎、中耳炎、気管支炎、気管支肺炎、肺炎など)が加わったと判断して、抗菌剤療法を追加します。免疫抵抗力の弱い子供や高齢者の風邪症候群は注意が必要です。
基礎疾患をお持ちの高齢者の方が風邪をひいた場合に抗菌剤を数日処方する時があります。風邪のほとんどは病原性ウイルス感染ですので抗菌薬で治療する方法は意味がないのです。「魔法の弾丸」と呼べる特効薬はありません。抗菌薬は人に自然に備わっている防御・排除機能をあくまで手助けするものです。
夏風邪は腹痛や下痢などの消化器症状が出る場合がありますので、腹痛を抑える薬や下痢止めの薬を併用します。
ところで、抗菌薬と抗生物質とは違うのでしょうか?抗生物質とは微生物が作った物質で、他の細菌に対して抗細菌作用を持つものです。科学技術の進歩によって人工的に合成されたものもありますので、抗菌薬=抗生物質+合成抗菌薬となります。
耐性菌を誘導しないように、抗菌薬を用いた肺炎治療でもせいぜい、2週間程度の加療期間で十分です。よく、「風邪を早く治したいので抗菌剤を含む風邪薬をほしい」と希望される人もいますが、早く治したいのであれば、安静を保ち睡眠を十分取り日々を過ごすのが何よりの基本なのです。
風邪の予防法はありますか?
風邪の原因のウイルスや細菌は飛沫感染(咳をしたときに飛び散る飛沫です)と接触感染ですので、上気道・下気道・肺への侵入を防ぐために外出時はマスクをして、口腔内の乾燥を防ぎましょう。口腔内が乾燥すると口腔粘膜のバリア機能が損なわれてウイルスや細菌が侵入しやすくなります。のど飴やガムなどで唾液を誘導して湿り気を保つのもいいです。また、鼻呼吸は鼻毛で粉塵などをブロックしますので、鼻呼吸をして口開け呼吸はできるだけ避けましょう。
室内環境も乾燥しすぎや、逆に、湿気でカビなどが繁殖しないように空気清浄機などでの室内環境保全が大切です。もちろん、汚れた手で目や鼻、口などを触らないことも重要です。
不用意な人込みへの外出は避けましょう。咳をしている人との会話や食事会などはできるだけ避けましょう。外出から帰れば、うがいと手洗いに努めましょう。
たばこ喫煙者も気道粘膜バリア機能が破壊されていますので、風邪を引きやすく、引くと長引き肺炎になる場合がありますので、喫煙習慣はやめるべきです。
また、免疫抵抗力が低下しないよう、ストレスをためず、バランスのある栄養を取り、快眠を心掛けましょう。自ら風邪を引いたと思えば、適切に医療機関に受診することを忘れず、他のヒトにも感染させないように咳やくしゃみをするときはテイッシュペーパーで口鼻を覆いましょう。外出を控え、やむなく外出する時はマスクも装着しましょう。
終わり
