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センター長のささやき 第13話
第13話 酸素機器メーカーも必死の救援・対応を試みていました
HOT機器メーカーの必死の対応
実は、HOT機器メーカーに対し地震発災時の対応が気になっていたので2024年5月にHOT機器メーカーに質問しました。以下回答とともに記します。(原文ママ、但し電話番号・メールアドレス等の情報は削除しています。なお、お名前記載の方々には了承を得ました。)
フクダライフテック北信越の杉中氏回答;
“地震発生直後から在宅の患者様(在宅酸素、在宅人工呼吸療法、CPAP、ASV患者対象)に安否確認の連絡をしました。 そして、各医療機関に安否確認報告書を提出し、停電など酸素濃縮器使用不可患者へボンベ配達しました。在宅での機器使用不可能な方にあらたなHOT CPAP器械準備(器械紛失、故障 避難所や避難先で器械が手元にない方へ)をしました。また、 DMATの要請でボンベ約100本を準備しました。 DMAT要請で特養「こすもす」へ酸素濃縮器5台貸し出し1か月ほど使用しました。抜けている点などあるかもしれません”
その後の5月30日、重ねてフクダライフテック北信越金沢営業所の杉中氏に以下の質問をし回答を得ました。(原文ママ)
- 東京本社から何らかの連絡がありましたか? それは、貴方が、支援活動をし
たあとでしたか?
→弊社では災害の発生に伴い災害用プロジェクトが立ち上がるような仕組みがございます。添付の資料ご参考までに - 県庁からの連絡はありましたか?(県庁も混乱していたようですが)
→県庁からの連絡はなかったと聞いております - 石川県の2大学病院の呼吸器内科から支援要請ありましたか?
→金沢営業所へ直接の要請は確認しておりません - 他のHOT機器、NPPV、CPAP関連メーカー担当者と情報交換・協力体制にありまし
たか? →他のメーカー様との連絡などはございませんでした - 電話不通状態と思いましたが、在宅の患者さんの安否確認の方法は?
→弊社の営業所から電話での確認を行いました - 在宅酸素、在宅人工呼吸療法、CPAP、ASV患者対象、各医療機関に安否確認報告
書提出はいつの時点でされましたか?
→まずHOT、HMVに関しては震災当日の途中経過と1月確認完了時点で提出しました。 CPAP ASVに関しては1月から確認を行い途中経過も含めて2~3回に分けて報告しました - 病院から支援要請は4つの病院で時間差がありましたか?
→弊社の機器を使用している患者様ごとによって異なるかと思いますのであったように感じます。それぞれの病院様によって細かく状況が違ったと思います - 停電など酸素濃縮器使用不可患者へボンベ配達は何台でしたでしょうか?
→震災翌日から1週間ほどの依頼で30件ほどでした - DMAT要請でボンベ準備 約100本 どこの病院が一番多かったですか?
→実際のところボンベ使用は少なかったと聞いていて珠洲で10本、輪島で10本確認しております - 支援活動を通じて、何が一番困りましたか?
→道路状況が把握できないという点です - 工夫・改善すべき点は何でしょうか?
→安否確認の連絡の際 患者様ごとに複数の連絡先をあらかじめ登録しておく必要があるように感じました
チェスト社森岡氏の報告;
- 電源途絶時に利用者から問い合わせがありましたか?どんな対応されましたか?
→特別連絡等はございませんでした - 亡失したCPAP機器はありましたか?
→現状1台のみ確認が取れていない器械がございます - 避難所でCPAP機器は使えたでしょうか?
→能登方面に数名患者がおりましたが、場所によって違うという印象です - 他のCPAP機器メーカーと連携はありましたか?
→特にございませんでした - 何が一番問題でしたか?
→患者と連絡が取れないことでした
2024年5月8日 帝人ヘルスケア社から聞き取りしました;
北陸3県全体のHOT者は2200名を超える。そのうち237人が能登北部地区在住。発災初日から携帯電話で安否確認をしました。固定電話はつながらず、2日目に入り、連絡できるところはできました。酸素ボンベの依頼あれば運びました。中能登町のショッピングセンターと穴水町の「ドンタク」食品スーパーの駐車場に予備酸素ボンベを運び、そこに取りにきてもらいました。珠洲、輪島は交通途絶で運べませんでした。余分の酸素ボンベはすでに備蓄していたものと、宇野酸素にあるものを確保、県外に200本をそのあと確保、その後も300本確保しました。が、実際の使用量は、それ以下でした。DMATから3日に連絡あり、当社で電話のつながらない人の安否確認を依頼しました。珠洲のDMATに酸素ボンベ12本、それ以外に珠洲、輪島に10本程度、穴水には2本置きました。実際はそれで足りていました。各酸素メーカーとは連携せず、それは、個人情報のしばりがあり、垣根を越えて患者共有はできませんでした。病院や県庁からは直接連絡はなかったです。県庁内で県とDMATとの会合あり、HOT患者への対応を9番目に取り上げていたと後で知りました。県庁はCOVID-19の関係でHOT 機器を20台保持していたが、それを実際には運用しなかったです。能登地区の災害対応病院は呼吸器内科医のいない七尾市の能登総合病院です。住居の倒壊などで亡失HOT機器は30台程度と見込んでいました。CPAPは避難所でも補助電源で使用可能でした。が、実際持ち込んでも、周囲が気になり、我慢して使用しなかったとのこと。
東日本大震災の教訓は生かされたか?と感じています。
2024年5月10日 宇野酸素メディカル事業部犬飼氏より聞き取りを行いました;
もともと石川県とJIMGA(一般社団法人日本産業・医療ガス協会)北陸支部とで災害時の協定を締結しており、医療ガスについてはJIMGAの依頼を受け、石川県の薬事衛生課と連絡を取り対応を行いました。七尾に営業所があるものの担当者も正月休みで、金沢営業所でも対応しましたが、HOT患者の安否確認は、そんなに時間を要しなかったです。が、連絡が取れない患者もいました。車での避難中に立ち往生となり、連絡あるも、ボンベ配送するも現場にたどりつかなかったが、その患者は携帯用HOTの電源を車で充電して対処していました。HOT患者5名と人工呼吸1名のうち、1名は酸素ボンベ運べず、病院に運ばれたが、自衛隊のヘリで金沢医科大に搬送しました。1月5日までに各医療機関に安否確認報告を行いました。道路状況が悪く、通行止めや渋滞に難渋しました。県に緊急車両登録をしている車も、あまり、意味がなかったです。患者からのクレームはなかったです。酸素ボンベの依頼は病院から、あるいはDMATからとばらばらでした。酸素調整器の手配は珠洲病院10台、輪島病院10台、柳田温泉病院2台、HOT機器の手配は珠洲病院7Lx2台、3Lx5台、輪島病院7Lx1台、3Lx5台、富来病院5Lx10台で、各病院は提供した酸素ボンベ機器で事足りました。奥能登3か所の医療機関でタンクの傾きが発生したため、仮供給設備を施し供給を行いました。西部緑地公園にも県の依頼でHOT機器3台と酸素ボンベ3式を設置しました。医療用酸素ガスで十分で、工業用酸素は必要なかったです。同業他社の酸素ボンベ充填作業をも行いました。また、災害対策用HOT機器も貸し出しました。災害時の、患者情報共有が課題です。個人情報の壁がありました。
9月21日能登豪雨被害への対応
その後、10月にはいり、9月21日の能登豪雨災害時の対応についても質問しました。回答をそのまま記します。
帝人ヘルスケア株式会社 坂野氏からの回答;
HOT患者様では輪島市でご自宅が浸水され酸素濃縮器が水没し回収を行ったのは1件です。(ご本人は輪島病院に避難中です)
孤立集落となっていました珠洲市大谷町の患者様で大谷小中学校に避難された方がいらっしゃいましたが、現在は息子様宅のある羽咋市へ避難されておりご無事でした。
CPAP患者様ではご自宅が浸水され機器が水没し交換対応を行ったのが3件ございます。
安否確認対応を終えておりますが、まだまたこれからも対応が増えてくると考えている。
フクダライフテック北信越の杉中氏からの回答
在宅の患者様から救援依頼、また病院様からのボンベ等の要請はございませんでした。
弊社としては9月22日にHOT、HMV患者様 週明けの24日にCPAP、ASV患者様へ安否確認の連絡を取りました。その中で連絡の取れた患者様で1件ASVが水没したとの報告を受けました(24日に代替の器械準備済)。現在CPAPの方で数名連絡ついておりませんがそのほかの方はすべて連絡ついており各医療機関へ安否確認報告書としてFaxにて報告済みです。
以上、酸素機器メーカーの当地の担当者に種々聞き取りをおこないました。
HOT機器メーカーの公式発表
一方、各在宅酸素機器メーカーの公式報告もインターネット上に公開されています。
帝人ヘルスケア株式会社の公式災害対応レポート
元日に発生した令和6年能登半島地震におきまして、社内マニュアルに基づき在宅酸素療法や在宅人工呼吸療法を行っている患者様への対応を実施しています。発災当日より社内システム(D-Map)を使用した安否確認を開始し、1月1日震災発生約6時間で70.7%、約29時間で94.2%の安否確認を行う事ができました、9日間で完了しました。石川県ではDMAT(災害派遣医療チーム)対策本部と連携して奥能登エリア※ を含む被災地域の患者様へ酸素ボンベの配送等を実施しています。今後、避難等に伴う状況の変化に対しても、医療機器の継続的な供給に努めてまいります。※珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、志賀町。
フクダライフテック社の公式災害対応報告
災害時業務支援システム「フクダレスキューウェブ」を活用して、石川、富山、新潟県在住の延べ約1200名の療養者安否確認と機器の状況確認を実施し、完了後(ただし、確認に要した時間経過は不明)、各医療機関へ速やかに専用布告書を用いて報告しました。
このように、各酸素(機器)メーカーが地震発災直後から懸命に対応を試みていることがうかがえます。1995年の阪神・淡路大震災、2004年の新潟県中越沖地震、2011年東日本大震災などでの経験を生かした結果です。が、道路の損壊と通信の途絶が想像以上でHOT,CPAP,在宅人工呼吸器利用者全員との速やかな連絡は困難でした。そして、個人情報の壁がやはりネックとなっているのがうかがえます。
行政当局の対応
行政当局も早期に、以下の通知を出して工業用酸素ガスボンベで医療用酸素ガスの供給を行うように、また、医薬品、医療機器等運搬の緊急車両への優先的ガソリン給油などを関係各社に要請していました。
第14話 能登北部医療圏の医療人材不足をお話します に続く